福岡タクシー事故と軽井沢バス事故

昨年暮れに起こった福岡のタクシー暴走事故は、イベントデータレコーダーの解析の結果、衝突直前にアクセルが踏まれていたことが判明したことから、ブレーキとアクセルの踏み間違いが事故原因である可能性が高いと考えられています。運転経験豊富な職業運転手である個人タクシードライバーがそんな単純ミスを犯すのか、衝突するまでの300メートルもの間、操作ミスに気付かないなんてことがあるのかといった疑問が浮かぶのですが、実際に踏み間違いが事故原因であるならば、経験豊富な運転手がミスに気付かず走り続けてしまうほど、アクセルとブレーキの踏み間違いは起こりやすいものなのだ、ということなのかもしれません。

一方、昨年初めに起きた軽井沢スキーバス転落事故では、大型バスの運転経験も訓練も未熟なドライバーが、本来の運行計画とは異なり一般道の峠道を走行した為に発生した速度超過が原因と考えられています。事故車両にブレーキの不具合もフェード現象が起きていた跡もなく、シフトはマニュアルだったとされています。大型の観光バスでは下り坂でフットブレーキだけでは制動力が足りなくなることがあるため、基本的にエンジンブレーキも併用しますが、観光バスに広く用いられている電磁エア式のフィンガーシフトは無理な変速ができないようになっており、一旦速度が上がってしまってからいきなり低いギアに入れしようとしてもギアはニュートラルに戻ってしまい、エンジンブレーキを利かせることができません。碓氷バイパスは緩やかなカーブと坂道が続く比較的平穏な道路ですが、夜間の走行だったために速度超過に気付くのが遅れたのかもしれません。落ち着いて、高いギアから徐々に低いギアに入れていけば段階的にエンジンブレーキを利かせることもできた筈ですが、慌てて低いギアに入れようとしてはニュートラルに戻されて、制御不能な領域に至ってしまったのではないでしょうか。