私たちは日本は被爆国であり、さらに非核三原則を掲げている核兵器とは無縁な国だ、と考えがちです。けれど実際には世界一の核兵器保有国であるアメリカに安全保障条約で守られている、アメリカの核の傘で守られている国でもあります。
 また、核拡散防止条約はもともと第二次大戦後の枠組みのもとで、日本とドイツの核保有を禁じる目的で作られた国際条約です。本来は核保有国の核軍縮を推し進め、なおかつ非核保有国の核武装を防ぐという大義名分を掲げながら、実際には核兵器を核保有国に独占させるための条約でしかありません。
 核拡散防止条約に未加盟で核実験を行なったインドとパキスタンには、アメリカや日本は経済制裁を課していましたが、2001年の同時多発テロを受け、アメリカの対テロ戦争に両国が協力するのと引き換えに経済制裁は解除されました。そして今年になってアメリカは両国の核開発を容認するに至りました。つまりアメリカは自国に都合が良ければ、核拡散防止条約に加盟せずに核武装をしても良い、という考え方なのです。
 北朝鮮の地下核実験を強い調子で非難する論調は、このアメリカの論理に符合して行なわれており、日本もそれに同調しています。アメリカにとっては北朝鮮核武装化は直接的な脅威ではなく、むしろ核兵器や核開発の技術が北朝鮮から対米テロリストやテロ支援国家に輸出されることの方が懸念される筈です。アメリカの取る道はこれまでのように核開発の放棄と引き換えに北朝鮮の要求に応じる懐柔策か、さもなくば国連憲章第7章に基づく核兵器の輸出を阻止する強攻策の何れかということになります。ただ金正日政権に対する懐柔策では同じことの繰り返しとなりますから、今回は強攻策に出る公算が高いと考えて良いでしょう。