■埼玉県ふじみ野市営大井プールで、小学2年の女児が流水プールの蓋が外れた吸水口に吸いこまれて死亡するという痛ましい事故が起きました。流水プールの監視員は吸水口の蓋が外れているとの報告を受け、応急処置の工具を取りに行くとともに口頭で蓋が外れているので近づかないように注意を促しているさなか、女児が吸いこまれてしまったのです。吸水口からは毎分10トンの水がポンプにより取り入れられ、3機のポンプで流水を作り出す仕組みになっています。吸水口は60センチ四方の鉄製の網2枚で塞がれているのですがそのうちの1枚が外れており、女児はその奥の60センチ×30センチの楕円形の取水口を通って、直径30センチの送水管に5メートル吸いこまれ、ポンプのプロペラにぶつかってドンという音がしたといいます。
 この事故は、監視員の対応によって防げたのではないかと思います。口頭で近づかないよう注意するだけでは不十分であり、プールから上がるよう指示をするとともに、複数の監視員が吸水口に人が近づかないよう立ち塞がることで大部分のリスクは取り除けたのではないかと思います。また、応急処置の工具を取りに行った監視員がいたとのことですが、仮に応急修理をするにしてもポンプを稼働させたまま作業をすることは危険ですから、手順としては先にポンプを停止させる必要があったのではないでしょうか。
 吸水口の蓋が外れた際の監視員の対応が不十分であったのは、吸水口の蓋が外れることが想定されていなかったからに他なりません。事故を防ぐために定められているのは吸水口の蓋が正しく取り付けられているかどうかを確認することだけであり、蓋が正しく取り付けられていれば事故は起きないのですが、何らかの理由で蓋が外れてしまえば事故が起きてもやむを得ないような危険な状態に陥ります。吸水口の蓋の確認は安全に運用するための規定に過ぎず、危険な状態が起きた際の対応が定められていなかったことで事故を防ぐことができなかったのです。
 遊泳中の小学3年の男児が蓋が外れていると女性監視員に告げたのが午後1時30分過ぎで、女児が吸いこまれたのが1時50分でした。その間監視員は口頭で吸水口に近づかないよう注意していましたが、潜水してきた女児にはその声が届かなかったようです。
 ところで、吸水口には蓋が二枚並べて取り付けられていました。この設計に問題はなかったのでしょうか。二枚のうち一枚でも外れると人が吸いこまれてしまうのですから、蓋は二枚よりも一枚の方が安全性は向上します。また二枚の蓋の内側に直径六〇センチの吸水管に水を導くスペースがありました。管にかかる圧力は相当なもので、ここに人が貼り付けられてしまうと恐るべき力で吸いこまれてしまう訳ですからそこに改めて蓋をつけることにはあまり意味はないのかもしれません。ですがそこに蓋があれば、仮に二枚の蓋が外れてしまったとしても、管の奥にまで人が吸いこまれてしまうことはなかったでしょう。二重の安全対策を施すのは過剰設計でしょうか。