去る8月2日、腰骨軟骨の疲労骨折のため全治6週間との診断書を出して夏巡業に参加せず、故郷のモンゴルでサッカーに興じていたとされる横綱朝青龍関に、日本相撲協会は①秋場所九州場所の2場所の出場停止と②九州場所千秋楽までの謹慎、③4カ月間30%の減俸処分と三つのペナルティを与えることを決めました。
「夏巡業をサボりながらサッカーに興ずるのは許せない!」とペナルティを与えた相撲協会の気持ちも判らなくはありません。巡業は休むけれども本場所には出場するということですから、相撲協会の本道から外された巡業部の親方衆はさぞやご立腹だったことでしょう。それでは腰の軟骨の疲労骨折というのは仮病だったのでしょうか。相撲協会がそうした疑惑に対する調査をして事情を明らかにすることなく罰則を与えたというのは如何なものかと思います。
次に「二場所の出場停止」というのにも大変驚きました。謹慎や減俸は処罰としてアリだと思うのですが、実力者である横綱を出場させないというのは興行的にマイナスではないのかということです。新横綱となった白鵬関へのサービス八百長のように思われてなりません。また「サッカーができるくらいなら夏巡業に出ろ!」と言うことだってできたはずなのに、相撲協会は「お前はもう巡業に来なくて結構」という態度を取ったのです。
これまでにも関取に対して出場停止処分が下されたことがあります。過去には自ら土俵を割ったり、引き分けに持ち込もうとした力士の取り口への処罰として数日間出場停止というのがあり、最近では自動車で人身事故を起こした力士に対して一場所出場停止という処分がなされたことがありました。自動車事故を起こした力士に一場所出場停止というのは禊ぎ行為としての謹慎としてやむを得ないところがあるとは思うのですが、朝青龍関の例はこれとは全く違います。
もちろん他のスポーツ競技でも出場停止というものはあります。プロ野球でも暴力行為に対し罰金とともに課せられることはありますが、それは団体競技の一選手であって、そのチームが試合ができなくなるわけではありません。またF1でチャンピオン争いをしていたミハエル・シューマッハ選手にペナルティとして出場停止処分が課されたことがあります。F1では年間でタイトルを争うチャンピオンシップであり、出場停止はそのままチャンピオンシップの点数に関わるペナルティということになります。他にもポイント剥奪といった処分が出されたこともありました。
ところが朝青龍関への出場停止処分は、取り組みを楽しみにしている観客の気持ちとは関係なく、モンゴル人横綱の横暴に負けてたまるかという相撲協会の面子のために課せられたペナルティとしか思えません。
けれども朝青龍も負けてはいませんでした。今度は「解離性障害」という精神病?を持ち出して、謹慎期間中のモンゴル帰国を勝ち取ったのです。まるで「俺は相撲協会の言いなりにはならないぞ、そっちがその気ならこっちはこうして、それからまた復帰後は思う存分土俵の上で暴れてやるから今に見てろよ」とでも言いたげな感じです。
今年はこれから強い横綱がいないぬるま湯場所が二場所も続きます。そしてその場所での優勝には、「朝青龍のいない場所での優勝」という品格に欠ける優勝ということになります。