ekiden_racer2009-07-23

21日に発生した大雨による山口県防府市の土石流による死者は10人を越えました。国道262号線を走行中の自動車や特別養護老人ホームライフケア高砂が被害を受けたのですが、老人ホームの理事長が直後の取材に上流の木々を伐採したまま放置したことによる人災だと訴えていたので気になっていました。老人ホームの山側にある沢に沿って発生した土石流は、もとあった沢や暗渠を埋め老人ホームの建物を貫くように流れ出て、今も老人ホームの建物の内部が川のようになってしまっています。
強い雨が降り続いた21日午前7時過ぎから9時過ぎまでに少なくとも3回、県などから土砂災害の危険が非常に高いことを示す土砂災害警戒情報が出されていましたが、防府市はこの情報を土砂災害警戒区域であるライフケア高砂を含む一帯の地域に伝えていなかったそうです。防府市総務課によると「情報収集などで混乱していた。詳細は今後検証する」とのことです。ただこれは「現場が混乱していた」といった話ではなく、防府市にはこうした災害関連情報を伝える仕組みが確立されていなかったか、あるいは仕組みはあったとしても実際にはそれが働かなかったということです。市は独自で入手できる以外の情報を県から入手していたにも関わらず、それを何時間も放置し続けました。そして12時過ぎ、土石流が老人ホームを襲います。防府市が老人ホームのある真尾下郷地区へ避難勧告を出したのは土石流被害が発生した5時間後の17時20分のことでした。
さらに防府市は今回被害が出た地域を含む土砂災害警戒区域への周知を行っておらず、警戒区域を示すハザードマップの作製にも着手していないことが判っています。防府市はこの不作為の理由を「作業にかかる人的労力や財政的な負担のため」と説明しているそうです。市長も記者会見で「限られた行政能力ですべてを点検することは大変」と述べていました。
多くの地方自治体が大変厳しい財政状況にあると言われています。そのように財政が潤沢でないからこそ、逆に必要なこと優先されることを選択することが求められる筈です。自治体住民の安全を守ることは自治体の最大最優先の課題であり、自治体が独自でできないのであれば地域住民の協力を得るなどして、限られた能力を最大限に活かすことが自治体やその長の役割ではないでしょうか。