ekiden_racer2009-08-14

8月9日夜西日本に降り続いた台風9号に伴う記録的豪雨で、兵庫県佐用町では10人を超える死者不明者を出す被害が出ました。佐用町では佐用川、幕山川、千種川など町内を流れる川が氾濫、さらに日頃は水深10センチ程度の水流しかない用水路までが濁流と化し、夜9時20分に出された避難勧告に従って避難場所を目指す人たちを飲み込んでいきました。
佐用町では佐用川の水位が3メートルを超えたり、1時間の予測雨量が30ミリを超えたりした場合に避難勧告を出すと定めていました。佐用川の水位が3メートルを超えたのは7時58分、そして午後8時50分までの1時間に観測史上最大の78・5ミリを記録しています。もとの地域防災計画によれば午後8時の時点で避難勧告が出されていて然るべき状況でしたが、実際に避難勧告が出されたのは9時20分であり、午後8時の時点よりもさらに水量が増した状況で住民は避難を開始し、濁流に呑まれたのです。
現実問題として既に避難基準水位・雨量に達している時点で避難すること自体が難しくなっているというケースが多いです。それが夜間であればなおさら避難は困難であり、現実的に避難することが無理なこともあります。つまり「避難勧告」を出す必要が生じた時点で既に避難が難しい状況に陥りつつあることが市町村長が避難勧告を出すことを躊躇させてしまう一つの要因であるように思います。避難勧告を出す前に避難準備情報を出して注意を促しておく、避難が難しい独居老人や水害・土砂崩れが特に警戒される地区住民には早めの避難準備や予防的な避難を個別に勧告するといった細かな対応が必要になるのではないかと思います。
また幕山地区の町営住宅から避難指定場所に向かうには幕山川を渡る必要があり、3世帯9名の死者行方不明者を出してしまいました。予め避難場所を定め避難計画を策定しておくことは大変重要なことですが、水害による避難の際に危険な河川に近づく・横断することを避けるような避難経路を策定しておかなくてはなりません。
避難勧告や避難指示をどう取り扱うかは自治組織によりけりであるとは思いますが、逆に限界もあります。市町村長は市町村民全体のことを考え、自治会長は自治組織住民全体のことを考えます。必ずしも個別に手厚く対応してくれる訳ではありません。また避難勧告・避難指示は強制力がある訳でもありません。豪雨や台風の際に屋根や田畑を見に行って被害に遭うことも多いので注意は必要ですが、近くの河川の状態や裏山からの出水などどの程度の危険が迫っているのかを把握すること、状況を見て避難が必要なのかそれとも避難に出向くよりは二階に避難するべきなのか判断するといったことは、「自分の安全は自分で守る」という基本に立ち返り、自分で判断し行動することが大切なのかもしれません。