■韓国や中国で、大規模な反日デモが繰り広げられ、中国にある日本の大使館や総領事館に投石やペットボトルが投げ込まれたり、日本人が殴られるという事件が報道されています。なぜ中国に反日感情が広がっているのかについて考えなくてはならないのですが、反日デモと投石や殴打などの過激な行動は切り離して考えた方が良さそうですし、中国の警察が警備にあたりながら投石などの過激な行動を積極的に取り締まらなかったこと、そして中国政府は当初一連の事案に謝罪することなく、責任は日本にあるという態度を取りながら、徐々に無届けのデモを取り締まろうとしたり、政府でなく自治体などが補償に応じようとするなど、複雑な対応を取っている点も注視しなくてはなりません。
 ところでドイツの戦後補償について、イギリスやフランスなどの戦勝国側の市民は概ね「ドイツは戦争責任を果たしているし、戦後補償を果たしている」と評価しているようですが、ドイツに併合された歴史を持つポーランドでは「それは不十分だ」と評価されます。ここから戦争にどのように関わったかによって、敗戦国への感情が大きく異なることがわかります。つまり日本の戦争責任について、アメリカやソ連(ロシア)と、中国・韓国をはじめとするアジア諸国とではその評価に温度差があることは念頭に置いておかなくてはならないだろうと思います。中国東北部朝鮮半島を併合した日本は、それらの国から敵対感情を抱かれやすい、ということです。
 ですから、竹島尖閣諸島など韓国や中国との領土問題を取り扱う際には、経済水域だとか歴史上の事実だけを踏まえるのでなく、戦争の記憶を呼び覚ますデリケートな問題という意識を持たなくてはならないようです。ところが日本には戦争に敗れて焦土の中から復興した戦後の歴史があるために、自分たちも被害者であるかのような意識がどこかに残っているように思います。そして戦勝国であるアメリカが沖縄や小笠原を一旦米国領にしたり、ソ連(ロシア)が樺太を領土とし北方四島を占拠したように、竹島尖閣諸島を自分たちが分け与えられることは当然なのだと考えているように思います。また、もともと日本人が住んでいた島を返還することと、人が住むことのない孤島とは別に考えなくてはならないのかもしれません。
 日本政府も先の戦争が誤ったものだとしていることには変わりはないと思うのですが、「だから戦争前の状態に戻したい」と考える日本と、「過ちなのだから改めて当然」とする韓国・中国との間に大きな意識のずれがあるように思います。