■午前9時40分頃、兵庫県尼崎市のJR福知山線で、宝塚発同志社前行き快速電車(乗客約580人、207系車両)7両編成のうち前5両がカーブを曲がりきれず脱線、線路脇のマンションに前2両が横向きに押し潰され、これまでに死者59人、けが417人(うち重傷は139人)が確認されています。
 同列車は前の停車駅伊丹駅オーバーランしたために1分半遅れで発車し、塚口駅を1分遅れで通過、現場となった半径300メートルの比較的きついカーブに差し掛かったところで脱線しました。車掌や乗客の話では、運転士は遅れを取り戻すために通常以上のスピードで走行していたといいます。ちなみに同線のカーブに差し掛かる地点までの制限速度は120キロ、半径300メートルのカーブの制限速度は70キロで、理論上133キロ以上でカーブを通過すると脱線の可能性がありますが、207系電車の設計上の最高速度は120キロとされています。
 JR西日本によりますと、まだ事故車両に閉じ込められている23歳の運転士は運転歴11ヶ月と経験が浅いだけでなく、これまでにもJR片町線上狛駅で数百メートルオーバーランしたことによる運転資格停止処分など、過去3回訓戒処分を受けています。運転士は24日午後2時より運転勤務を始め、仮眠ののちこの列車の運転で勤務を終える予定でした。また、枕木に脱線の痕跡が見られる60メートル手前の線路に粉砕痕があり、線路に置石があった可能性も示唆されています。
 つまり、運転士は経験が未熟で適正に欠ける可能性があり、事故列車の運転業務ももっとも疲労がたまった最後の勤務でした。オーバーランによる遅れを取り戻すために、通常よりスピードを出して走行していました。そして置石の可能性があります。

 列車はカーブの途中で脱線したのでなく、カーブに差し掛かる地点で脱線しました。線路のカーブ部分には、カントと呼ばれる高低差がつけられており、半径300メートルの線路では、外側の線路が内側の線路より97ミリ高く作られています。カーブに差し掛かる地点には、そうした僅かな線路の捻れがあるために、脱線しやすいと考えられています。
 そこで置石による脱線が考えられるだけでなく、置石のために通常とは異なる制動をかけてカーブに進入したことで脱線したことも考えられますし、置石はあっても影響がなかったか、もしくは実際には置石はなくカーブに高速で進入したために内側の車輪が浮いて脱線したとも考えられます。いずれにしても、スピードが低ければ脱線せずに済んだか、脱線しても被害はずっと小さかっただろうことは間違いありません。