■4月25日に発生したJR福知山線の列車脱線事故で死者は95人に達し、まだ撤去が終わっていない先頭車両には今なお十数人が閉じ込められている模様です。マンションの角に押しつけられた2両目の車両で約70人が亡くなりました。先頭車両はマンションの1階駐車場に潜り込むように衝突したことにより、ところどころに生存可能なスペースができた一方で、車両側面から途中が折れ曲がる形でマンションに衝突した2両目は、車両がほとんど押し潰されたような格好になり、非常に多くの犠牲者を出してしまったようです。
 航空・鉄道事故調査委員会は、置石による脱線が考えにくいとの見解を示すとともに、現場線路に残った脱線痕が極めて少ないという事実を発表しました。通常脱線事故が発生した際には、枕木に脱輪の跡が残ります。脱線痕が少ないということから、車両が高速で線路から弾むように投げ出されたとか、脱線した車両が横倒しになった状態で通過したということが考えられます。いずれにしても、過去のに例のない特異な脱線事故であり、原因究明には時間がかかるとの見通しを示されました。
 死亡したと見られる高見隆二郎運転士が制限速度を超過するスピードで走行していた背景には、私鉄と競合する路線での遅延を秒単位で取り締まるJR西日本の企業体質と、運転ミスを犯した乗務員に対する制裁的な教育指導法があるのではないかとの声が上がっています。
 **運転ミスを犯した乗務員には再教育がなされるのですが、その実態は乗務員に「再びミスを犯した際には運転を降ります」と誓わせるような見せしめ的要素を含んだ精神論だったとされています。過去にもJR京都駅で50秒の遅延が生じた44歳の運転士がこの教育課程を終えた日に自殺するということがありました。かつて国鉄時代には遵法闘争と呼ばれた安全が確認されるまで列車運行を行わないという安全至上主義が列車の慢性的な遅延を発生させていたことを思うと、昔日の感があります。