小泉首相はこの度の衆議院解散を郵政解散と呼び、郵政改革にイエスかノーかを国民に問いたいと述べています。代表制民主主義に基づく国会の仕組みからすると、憲法の改正を除いては国民投票は法的にも認められていませんから、こうした小泉首相の方針には疑問がないわけではありません。NHKの世論調査によると今回の選挙で重視する政策として、年金改革を挙げた人は42%、郵政改革を挙げた人は僅か18%という結果でした。小泉首相の挑発に対し、国民は比較的冷静に政策課題を見極めているようだという印象を受けました。

さて、郵政の民営化は避けて通れない道であり、今回の選挙ではこれを急ぐのか後回しにするのかの判断を仰ぐのだという主張が主流となっている印象があります。政治家が郵政民営化を問題にする際には郵便貯金の抱える220兆円の財源などが焦点にされることが多いのですが、利用者にしてみればそれよりも郵便局を民営化して本当にサービスの質は低下しないのかという点が最も気にかかります。サービスの質が国会で論点にされる際にも、過疎地域の窓口を減らさないことばかりが問題にされているように思いますが、サービスの質は何も窓口の数で決まるものではありません。
 私は郵便局が民営化されると確実にサービスの質は低下すると思います。郵便局員が公務員である現在でも、郵便物を横領したりという不祥事が発生していますが、これが民営化されて職員の待遇に不安要素が増すことで、職員の質が低下することは避けられないでしょう。
 私は何も単純に官営の郵便局が民営化されることで質が低下すると言っているのではありません。また民営化された企業の方が、質の高いサービスを提供しているという事実もあります。しかし、競争原理のもとで様々な業務システムを作り上げ、淘汰された中で今日の位置を占める民営企業と、様々な法律に擁護されてきた巨大な組織が民営化されただけの企業とでは、サービスに関わる質の部分でその意識も大きく隔たっているでしょうし、システムも今のままでは様々な不正や不具合を抱えていると言わざるを得ません。
 郵便事業について比較してみても、ポストに投函された信書を郵便自動車が集めて回るシステムと、運送各社が行なっているメール便とでは、後者がバーコードで管理されている一方で、郵便の信書は書留や配達記録郵便を除けば全くのノーチェックです。それでいて料金や配達までの日数も宅配業者のメール便と同程度であったり却って上回っているということになると、その優劣は明らかです。