午後8時の投票終了と同時に、民放各社が発表した出口調査による自民党の予想獲得議席は、民放は各社とも三〇〇を大きく超えていました。実際には自民党の獲得議席は二九六でしたが、比例東京ブロックでは、自民党の獲得票数が多すぎて選挙人名簿記載者が足りず、次点となる社民党の候補者が当選するという珍事が起きるほどの、自民党の圧勝でした。
 私は民主党過半数は取れないけれども、これまでよりも与野党が拮抗する結果になるのではないかと予想していました。投票日前から、自民優勢とは言われていました。しかし事前の予想では、誰もここまでの歴史的大勝は予測できなかった筈です。選挙への感心が高まり、投票率が上がればそれだけ民主党が有利だと考えていたからです。それに自民党は造反した前職の議員三十三人を公認しませんでした。刺客が送り込まれた選挙区では、これまで以上に民主党が健闘できるだろうとも思っていました。
 ところが、獲得票数に応じて議席が配分される比例区では民主党もそれなりに健闘したのですが、選挙区では散々たる結果に終わりました。小選挙区では当選者以外の票は死票となるためです。民主党候補者からは、「年金問題と政治改革を訴えたが、有権者に届かなかった。小泉首相郵政民営化を論点として打ち出したのなら、民主党も真っ向からこれに応じるべきだった」との批判の声が上がっています。確かに、郵政法案に反対した民主党は、改革を進めたいのか後退させたいのか、よくわからないという印象がありました。マイクを向けられれば改革を推進しますと答えるのだけれど、それなら何故先の国会で郵政法案に反対したのかよくわからない。民主党は、自民党の分裂状態での解散総選挙で選挙戦を有利に進めようとして、策に溺れたようにも見えます。状況は確かに、民主党にとってそれほど悪くはなかった筈です。しかし改革を強く訴える自民党候補と、刺客を送り込まれた造反候補の有権者への強い訴えかけに較べ、総合的な政策をマニフェストとして展開しようとした民主党の主張は弱かったし、陣営としても死ぬか生きるかしかない造反議員の抱える危機感とは較べものにならなかったのでしょう。かつて消費税導入が論点となった参議院選挙で、社会党が大勝したのは「消費税に反対する」という有権者のニーズを満たしていたからです。今回の選挙では「年金問題も大事だが、それよりもまず郵政改革を実現させようじゃないか」という有権者の意識が自民党を押し上げたように思われます。