耐震偽装問題で、姉歯建築士・木村元木村建設社長・篠塚元木村建設東京支店長・内河総合経営研究所所長の証人喚問が行なわれ、全国中継されました。
 この中で姉歯証人は、耐震偽装は篠塚証人からの強い圧力で自らその手法を考案して行なったこと、それが法令違反であることは暗黙の了解があったと証言しました。
 これに対し、篠塚証人は鉄骨の使用量を少なくすることやその指示に従わない場合は他の構造計算事務所があると圧力を掛けたことは間接的にあったと認めましたが、それはあくまでも法令を順守した範囲内で行なわれていたと了解していたとの見解を示しました。この点は姉歯証言と食い違っています。また、民主党議員の質問から、奈良のホテル建築に際して、木村建設から総研への金の流れはなかったと木村証人は発言しましたが、そこに第三の業者がいて、そこに不動産仲介手数料という名目での金の流れがあったことは認めました。
 内河証人は姉歯証人とは面識すらなかったと発言していましたが、姉歯証人が総研が主催するセミナーの講師として参加していたことは認め、また姉歯証人が平成設計の元社長の葬儀か通夜の際に内河証人と会ったと発言したのに対して、葬儀には出席していないのでこれを否定しました。
 さらに、民主党議員から、木村建設の内部資料としてSGホテル建築に際しての内河総研所長を頂点とし、平成設計姉歯建築士が構造計算を担当する組織表を突きつけられましたが、これに対し内河証人はそうした組織表の存在を知らなかったと発言し、さらにホテルの経営コンサルタントが構造計算にまで口出しはできないと建築への関与を否定しました。
 さらに民主党議員から総研の幹部である四ヶ所氏の直筆での、ホテル建築に際し構造計算書も添付された詳細な指示書類を突きつけられた内河証人は、そうした書類があったことは知らなかったと発言し、総研には建築や構造計算のプロはいないという前言を翻し、一級建築士が五人、一級土木施工管理技師が五人いると証言しました。
 そのうえ奈良のホテル建築に際して金の流れのあった不動産業者は、総研とは関わりがないと発言していましたが、その人物が実際には総研のコンサルタントも行い、コンサルタント費用の40%を給料として支払っている関係者であると認めました。

 今回の証人喚問では、耐震偽装ホテル建設に際して、耐震偽装を指揮した総研と耐震偽装建築を請け負う木村建設平成設計姉歯元設計士の関わりはかなり明らかになってきました。一方、耐震偽装マンション建設に際しては、木村建設姉歯元設計士が大きく関わっていることは明らかになってきましたが、耐震偽装を示唆したのが建築主なのか、それとも安価な建設費でマンション建設を受注したい木村建設側が営業の一環として耐震偽装をリードしたのかという点については明らかにできませんでした。篠塚証人はあくまでも違法建築であることを知らなかったという態度で一貫していますし、構造計算のからくりについて建築主に明かすことはできないのではないかと考えると、耐震偽装について建築主はその内情まで知らなかったのではないかと結論づけても矛盾はないかもしれません。
 今回の証人喚問の対象ではありませんが、耐震偽装マンションの建築主であるヒューザーの小嶋社長と、民間検査機関イーホームズの藤田社長との間で、藤田社長が構造計算がおかしいと指摘した際に、小嶋社長が「自分だけ正義感を貫いてどうなると言う、地震が起きてマンションが倒壊した際に発表した方が役所も助かる」と発言したと言ったことでちょっとした対立が起きています。小嶋社長が事前に構造計算が偽装されていることを知らなかったとしても、その事実を隠そうとした態度は大きな問題だと思います。またイーホームズも今日の姉歯証人に、イーホームズは検査が甘く、二週間で検査が完了するのは担当者が中身を見ていないのだと思うと指摘されていました。耐震強度が偽装されていたことを隠そうとする建築主も、ろくに検査をしていない検査機関も、どっちもどっちというところでしょうか。