ライブドア東京地検特捜部の強制捜査が入ったのは16日の夕方でした。地検の強制捜査が入ったことは、ライブドアが組織的に犯罪に関わっていたと見なされていることを意味し、関係者の起訴、もしくは逮捕がほぼ確実な状況であると言えると思います。これまでライブドアと言えば堀江社長と乙部秘書が有名でしたが、地検の事情聴取は企業買収を行なっていたファイナンス部門の幹部が対象になり、宮内という幹部の名が広く世間に広まることになりました。
 今日は「いよいよ堀江社長が事情聴取を受けた」ということが大きなニュースになる筈でしたが、東京地検はそれ以上の大ニュースを用意していました。堀江社長と三人の幹部が逮捕されたのです。報道ステーションテレビ朝日とニュース23のTBSは急遽9時から放送予定を変更し、ライブドア関係者の乗った車両が東京地検から東京拘置所に移動する映像を空撮する特別番組に切り替えました。
 強制捜査から1週間のスピード逮捕というのも驚きですが、証券取引法違反風説の流布と偽計取引、さらには粉飾決算などに深く関わっていた幹部の逮捕は避けられないとしても、逮捕が堀江社長にまで及んだことも驚きでした。直接そうした容疑に関わったのが幹部だとしても、その報告を受けていた筈の責任者の逮捕は当然かもしれませんし、堀江社長がそれを指示していたのであれば尚更ですが、事情聴取からそのまま逮捕ということには大変驚きました。強制捜査が入ってからライブドアの株価は下がり続け、ストップ安で取引が成立しないといういわゆるライブドア株ショックで株価は全面安が続いていますから、そうした証券市場への配慮もあって今回のスピード逮捕に繋がったのかもしれません。
 ヤフーがオークションでは国内最大で、楽天はネットショッピングで国内最大の規模を誇っています。同じIT企業のライブドアもオークションもショッピングも行なっていますが規模ではそれらに遠く及ばず、今ひとつ何故それほどに企業価値が高いのかずっと疑問でした。強制捜査以降の報道で株式分割などの株価向上策が行なわれていたことだけでなく、関連企業や投資組合を使った株価操作により時価総額を高めてきたことがよくわかりました。ライブドアは本業のITではなく、M&Aを背景として株価を吊り上げることで、時価総額を増やすことに精を出していたのです。
 堀江社長は逮捕されるにしても何の容疑で逮捕されるのかわからないと語っていましたし、幹部も事情聴取で金の流れについては認めたものの、それが違法であるという認識はなかったと語っています。もちろんこれは法律違反になることを知らなかったのではなく、法制上の抜け道のような方法を見つけ出し、それは違法ではないという確信を持ってやっていたに違いありません。ただそうした方法を繰り返す中で、赤字の部門をグループ間で金をやりくりする虚偽報告という違反を犯してはいるようです。それにしても単純にそうと見破られることのないよう、慎重に工作されていたものと思います。
 かつてリクルートという会社が江副会長(当時)が未公開株を用いた政界工作で逮捕され、大変な社会問題になったことがありました。それでも求人情報の草分けという本業の強みを生かし、リクルートという会社は今もその業界ではトップです。ライブドアは本業のIT関連ではまだまだ国内トップには程遠い存在ですが、様々な会社を子会社化してきたことで豊かな人材とノウハウも持っている筈です(ただしライブドアの雰囲気にそぐわず人材は多く流出し、そのノウハウもどこまで残っているかは疑問ですが)。だとすると堀江社長や急成長を支えたファイナンス部門の幹部がいなくなってもライブドアという会社は生き延びることができるかもしれません。けれども江副会長の名が犯罪となって初めて人の眼に多く触れるようになった一方で、ライブドアという会社は堀江社長と同一視されるくらいに堀江氏個人の存在が大きな会社です。また中身が伴わず株価を上げて時価総額を高めるところにライブドアという会社の存在意義があったのだとすれば、リクルートのような存続と飛躍はできないでしょう。現にライブドア株東証で注意銘柄から監理ポストに移されました。既に市場では売り注文ばかりが殺到し下げ止まりで値がつかず取引ができない状態です。そして上場廃止も時間の問題とされています。