■昨日この欄でライブドアの今後をリクルートを引き合いにして論じました。企業トップの逮捕という点で共通はあるものの、崩壊していく過程ではアメリカのエネルギー会社エンロンの例を引き合いにする方が適切だったかもしれません。
 二つのガス供給会社が合併して発足したエンロンは、後に電力供給事業も手がけ総合エネルギー企業として成長しました。ところが実際に急成長を支えたのは巨大な資本にものを言わせたデリバティブ取引によってでした。電気・ガス事業が採算割れを起こしても空売りなどによって決算書を粉飾して株価を下支えしていました。そのうちにエンロンは本業のエネルギー事業収入が2割、デリバティブなどの金融取引での収入が8割に上るようになりましたが、粉飾決算によってエネルギー事業も好調であるかのように見せかけていたのです。その背景には規制緩和によって決算報告書の記載内容の簡素化がありました。
 さて、ライブドアがオン・ザ・エッジというHP製作会社からスタートし、他社との合併を繰り返してプロバイダ会社からポータルサイト会社へと成長した会社であることはよく知られています。時価総額が一時期一兆円近くにのぼる企業でありながら、その実体がよくわからない会社ですが、読売新聞によると本業であるIT関連の収入は2割で、あとの8割は株取引や企業買収によるファイナンス事業での収入となっています。IT企業といいながら実質は金融業が主体の会社です。粉飾決算が行なわれていた疑惑も濃厚ですし、株取引の規制緩和による時間外取引株式分割などもこの会社の成長を支えていました。
■さて、堀江容疑者とともに逮捕された宮内容疑者らは、証券取引法違反の容疑を認め、そこに堀江社長の指示があったとの供述を始めています。その一方で堀江容疑者は容疑を否認し、さらに検事調書への署名も拒否しているそうです。
 取締役の逮捕を受け、ライブドアでは六〇歳の新社長と二八歳の代表取締役による新体制を発表しました。株価は昨日の時点で176円のストップ安で売買が成立せず、東証はシステムへの影響を考慮し九〇分という制限を設けてライブドア株の売買を行なうこととしています。