瞬間湯沸器は他のガス燃焼器具と同様に給排気の方式により4つの方式に分かれます。一つが今回リンナイ製で問題になっている「開放式」、二つめが昨夏問題となったパロマ製の「半密閉式」、三つめが「密閉式」(一昨年問題となった松下製の暖房器もこの方式です)、そして四つめが「屋外式」です。
「解放式」は給気・排気ともに室内に放出されます。瞬間湯沸器は小型で低出力のもので、使用の際には換気が必要で短時間(目安として15分以内)の使用に限られます。
「半密閉式」は室内から吸気し排気は排気口を通じて屋外に排出される方式です。自然通気力で排気させる「CF式」と、ファンで強制的に排気する「FE式」があります。排気が給気系統を経由して室内に繋がっているため、排気系統にトラブルが生じると逆流の恐れがあります。
「密閉式」は給気・排気ともに屋外から給排気管を通じて供給され排出される方式です。自然通気力により給排気を行う「BF式」と送風機により強制的に給排気する「FF式」があります。解放式・半密閉式よりも理論的に安全な構造ですが、松下の暖房器では排気管ではなく吸気管に亀裂が生じた結果、送風圧力が低下し燃焼室内で一酸化炭素が大量に発生、圧力が低い吸気管の亀裂孔から漏洩するという事故が発生しています。
「屋外式(RF式)」は湯沸器自体を屋外に設置する方式で、燃焼室自体が屋外にあるため排気が室内に流入することは考えづらいのですが、リフォームに伴い誤って室内に設置したり、周囲を構造物で塞いでしまい窓を開けていたために排気が流入して中毒事故が発生することもあります。
さて、小型湯沸器に多い解放式の湯沸器では、87年から不完全燃焼防止装置の設置が義務付けられている一方で、半密閉式の湯沸器では設置が進みませんでした(98年当事の装着率は27%)。
改正前のガス事業法では「構造、使用条件、使用状況等からみて特にガスによる災害の発生が多いと認められるガス用品」である「第1種ガス用品」として「解放式瞬間湯沸器」と「半密閉式瞬間湯沸器」が指定されていました。ところが「解放式」は「半密閉式」に比較して不完全燃焼防止装置の設置率が高く、事故も減少傾向にあるとして改正後の「特定ガス用品」から「解放式」は外されました。
ちなみに98年の改正前の通商産業省の意見書ではこう述べられています。
開放式のガス瞬間湯沸器は、燃焼排気ガスの排除が十分に行われないと、排気が吸気、、中に再循環したりすることにより吸気中の酸素濃度が低下し 不完全燃焼を起こしたり燃焼が不安定になる場合がある。しかしながら、昭和64年から不完全燃焼防止装置の装着を義務づけられて、現在生産されている機器については、不完全燃焼防止装置等の装着率は100%である。直近3年でCO中毒事故は7件発生しているが、今後、不完全燃焼防止装置等が装着されたガス瞬間湯沸器の普及率が高まれば、CO中毒事故は減少するものと考えられる。以上を踏まえれば、開放式のガス瞬間湯沸器は、災害発生のおそれの程度等から、特定ガス用品に指定する必要はないと考えられる。
ただしこの見解のうち、CO中毒事故の発生件数を98年から直近の3年に限っていることに個人的に疑問を感じます。98年からの直近3年間に限れば、「半密閉式」事故は20件、「解放式」は7件であることは事実ですが、直近10年間では「半密閉式」49件・「解放式」42件と大差ありません。また「密閉式」「屋外式」は直近3年間の事故は0件、直近10年では2件であり、特定ガス用品以外に分類されることに異論はありませんが、これと直近10年で42件の事故が起きている「解放式」を同様に扱うことは不適当だと思います。