山梨県警の捜査情報がファイル交換ソフトウィニーを通じてネット上に流出していたことが判明しました。この手の情報流出「事件」は目新しいものではありません。ただ、一般企業が集めた情報が流出するのと、警察が捜査権を行使して収集した情報が流出するのとでは話が違います。警察でも既に同様の事案は発生しており、対策がなされていた筈なのですが、それはどのようなものだったのでしょうか。
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昨年3月、岡山と愛媛の両県警で供述調書などの流出が相次いだことを受け、警察庁は全国の都道府県警にウィニーの使用を禁じる緊急の通達を出した。通達では、承認のないパソコンは警察に関する情報を削除した上で撤去し、庁舎外にパソコンを持ち出す場合は情報を暗号化するよう求めた。
山梨県警も同年10月から全職員に対し、業務上の情報を私有パソコンに保存することを禁止していた。(朝日新聞
県警は業務以外での警察情報の持ち出しと、私物パソコンでのファイル交換ソフトの使用を禁止している。(西日本新聞
岡山や愛媛県警で2006年3月、相次いでウィニーによる捜査資料流出が発覚した際、県警は全職員に「ファイル交換ソフトを使用しない」とする誓約書を提出させていた。 
報告書などを作成する際の参考にしようと、前任の長坂署勤務時代の先輩警察官から入手し、私物のパソコンに保存していた。県警の事情聴取に対し、「学生時代からウィニーを使っていた」と話している。(読売新聞)
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新聞により内容が微妙に異なりますが、対策は凡そ次のようなものだったようです。
1.業務以外での警察情報の持ち出しは禁止
2.業務上の情報を私有パソコンに保存することは禁止
3.私有パソコンのファイル交換ソフト使用の禁止と誓約書の提出
今回の情報流出の過失の責任がどこにあるのかは明白なのですが(警察官、2と3に違反)、県警の対策が不十分であったために情報流出が起きたと言っていいと思います。私有のパソコンに警察情報の保存することを禁止したり(2)、ファイル交換ソフトの使用を禁止したり誓約書を書かせる(3)ということは、処罰の際の理由にすることはできても、それ自体は何ら情報流出を防ぐ役割を果たさないのです。逆に情報が暗号化されており、ネットにアクセスできないパソコンを警察官一人一人が自由に使えるようにしておくことで、仮にそのパソコンが盗難に遭おうとも、また警察官が故意に第三者に暗号化された情報を解読する方法を明かさない限り、つまり過失による情報流出は防げたのではないかと思います。つまり1の必要があって警察情報を持ち出す際に、それが流出させることができない、或いは流出しても意味のないものに変えてしまうような工夫をしないと、情報の流出を防止することはできません。
情報の流出は取り返しのつかないことです。警察官の意識を高めることで情報流出を防ぐのでなく、物理的に情報を流出させることができないような方法を取るというように、警察自体の意識を変えてもらわなくては、これではたとえ市民の生活を守る警察であっても、市民の情報を強制的に知り得る捜査権など、とてもとても付与できません。