安倍総裁の突然の辞任で自民党の後継総裁選びが賑やかになっています。ネットを見ている限りではポスト安部の最有力は麻生太郎幹事長であるそうです。この麻生なる人物が過去に「総理になるべき人物」についてこのように語ったことがあると角岡伸彦さんの「はじめての部落問題」(文春新書)で紹介されています。

部落出身の元衆議院議員野中広務の評伝「野中広務 差別と権力」(魚住昭講談社、二〇〇四年)に、野中が政界でどのように見られていたかが詳述されている。/永田町ほど差別意識の強い世界はない。彼が政界の出世階段を上がるたびに、それを妬む者たちは陰で野中の出自を問題にした。総裁選(二〇〇一年)の最中にある有力代議士は私に言った。/「野中というのは総理になれるような種類の人間じゃないんだ」/自民党代議士の証言によると、総裁選の立候補した元経企庁長官の麻生太郎は党大会の前日に開かれた大勇会河野グループ)の会合で野中の名前を挙げながら、「あんな部落出身者を日本の総理にはできないわなあ」と言い放った。/麻生事務所は「地元・福岡の炭鉱にからむ被差別部落についての発言が誤解されて伝わったものだ」と弁明しているか、後に詳しく紹介する野中発言によると、大勇会の議員三人が麻生の差別発言を聞いたと証言しているという(第十六章 差別の闇)
二〇〇三年九月二十一日、野中は最後の自民党総務会に臨んだ。議題は党三役人事の承認である。楕円形のテーブルに総裁の小泉や幹事長の山崎拓政調会長麻生太郎ら約三十人が座っていた。/午前十一時からはじまった総務会は淡々と進み、執行部側から総裁選後の党人事に関する報告が行われた。十一時十五分、会長の堀内光雄が、「人事権は総裁にありますが、異議はありますか?」と発言すると、出席者たちは、「異議なし!」と応じた。堀内の目の前に座っていた野中が、「総務会長!」と甲高い声を上げたのはそのときだった。「総務会長、この発言は私の最後の発言と肝に銘じて申し上げます」と断って、山崎拓の女性スキャンダルに触れた後で、政調会長の麻生の方に顔を向けた。「総務大臣に予定されておる麻生政調会長。あなたは大勇会の会合で『野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ』とおっしゃった。そのことを私は大勇会の三人のメンバーに確認しました。君のような人間がわが党の政策をやり、これから大臣ポストについていく。こんなことで人権啓発なんてできようはずがないんだ。私は絶対に許さん!」/野中の激しい言葉に総務会の空気は凍りついた。麻生は何も答えず、顔を真っ赤にしてうつむいたままだった。(エピローグ)

孫引きになるので全文引用させていただきましたが、そういうことを頭の中で考えているだけでもアレですが、そういうことを仲間内で談笑するような人に総理大臣をやってもらうのはちょっと嫌だなあと思いました。もっとも無責任に政権を放り出した安倍内閣の後始末と衆議院解散が役目だから、むしろこういう人にやらせるのがいいのか、とも思いました。