ekiden_racer2007-12-03

アジア野球選手権終戦となる対台湾戦で、日本は勝利すると勝利数で優勝・五輪出場権獲得、負けた場合でも0-1、1-2のスコアであれば直接対決の失点率により優勝・五輪出場権獲得となります。逆に台湾は3点差以上の完封勝利という条件で優勝となり、日本に勝っても2点以上取られると韓国が優勝となるという状況でした。(それ以外のケースではさらに自責点率で順位を決定することになります。)

  • 日本 100 000 603 :10
  • 台湾 000 002 000 : 2

結果は日本が大差をつけ勝利しましたが、7回がビッグイニングとなったことで大差がついたゲームで、日本チームは初回に1点を取ってからは無得点のイニングが続き、6回には台湾に逆転2ランを浴びるなど中盤までは大変厳しいゲームでした。もっとも1-2のスコアでゲームに負けても選手権では優勝となるのですが、7回以降1失点も許されない「もう後がない」状況にまで追い込まれたことも事実です。
とは言え、先発のダルビッシュは1回裏最初のバッターにヒットを許して以降、2死四球での出塁は許したものの、6回2死まで一安打ピッチングを続けていました。本来の調子が出し切れていないものの、ダルビッシュがこれまでの大一番でも見せてきた「悪いときなりの修正術」で3回以降変化球中心のピッチングで5三振を奪いながら台湾打線を抑えていました。
ところが6回2死から3番打者にヒットを許し、続く4番陳金鋒にカウント1-3からの直球が甘く入り、センター右に痛恨の2ラン逆転本塁打を打たれます。台中インターコンチネンタル球場は収容人員1万4千人ですが、台湾選手は名前をコールされストライクが一つ入り、日本チームがアウトになると大歓声が沸き起こります。1回1死以降、台湾チームは四死球での出塁しかありませんでしたから、球場は割れんばかりの大歓声に包まれました。大野コーチが一呼吸置き、ダルビッシュは5番打者を3球三振で6回を締めます。
7回、6番村田が死球で出塁、7番稲葉がヒットで繋ぎます。ここで2塁代走にキャプテン宮本が送られ、8番里崎がバントで送りますが、打球はピッチャー前に転がりました。失点を防ぎたかったのか、捕球した投手は3塁に送球しますがセーフとなります。フィルダースチョイスとなりますが、この際宮本は足の遅い里崎がダブルプレーになるのを防ぐため、ベースにではなく3塁手の足にスライディングし転倒させました。これまでの2戦出場のなかったキャプテンの、大変厳しいプレーでした。
無死満塁で打順は9番サブローに回ります。無死満塁は大チャンスには違いありませんが、多重殺を蒙ると一点ピンチとなります。台湾チームは満塁という大ピンチの場面で好投してきた先発陽建福を諦め、耿伯軒をリリーフに送りました。死球/安打/野選という流れですから投手交代もやむを得ないのかもしれませんが、満塁になってからのリリーフは荷が勝ちすぎるように私は思いました。いずれにしてもここが試合の分け目となることは間違いありません。熱狂と緊張が頂点に達したシーンでした。
変わったばかりのピッチャーとチャンスに強いマリーンズの4番の対決は、1-2のカウントから膝を落としたサブローがスクイズという予想だにしない結果が待っていました。連日古い話を持ち出して申し訳ありませんが、1960年三原大洋と西本大毎との間で争われた日本シリーズ第2戦、大洋リードの3対2で迎えた8回裏、1死満塁で西本監督が選択したスクイズは捕手前でボールが止まってしまい、3塁走者が捕殺・一塁にボール転送のダブルプレーとなり敗戦、シリーズ後オーナー永田雅一により優勝監督が解任されたことがあります。闘将星野からは誰も想像しえない作戦だったと思います。台湾チームはもちろん、日本チームのメンバーでも1点ビハインドの満塁の場面でスクイズを敢行するとは誰も思わなかったのではないでしょうか。ただしサブローは試合後、打席に向かう際にスクイズもあるかな…と星野監督の作戦を読んでいたと言います。
同点に追いついた日本はこの後1四球を挟む4連続タイムリーで逆転、試合を決定づけます。無死満塁のピンチまでぎりぎりで持ちこたえていた台湾が一気に崩れました。
日本は9回にも4番新井の2ランなどで3点を追加したほか、8回は藤川、9回を上原のリレーで勝利をおさめます。試合直後、セカンド付近で日本チームの輪ができました。台湾ベンチからも選手が出てきて、ゲームセットの挨拶か或いは互いの健闘を称えあうシーンがあるのかと思いましたがそれはなく、日本チームはマウンド付近へ移動し星野監督の胴上げと宮本キャプテンの胴上げが行いました。ここが敵地台湾であることを思えば胴上げは自粛するか、或いは胴上げを行うにしても最終戦を戦った台湾ナインと健闘を称えあってからにしても良かったのではないかと感じました。日本の勝利は素晴らしいことですが、最後は勝者としての相手への配慮に欠けていたようで、思えて少し残念な気もしました。