【事故概要】
5日午前3時半ごろ、岐阜県各務原市の県営尾崎団地の5階から出火、4階の住人が2歳の女児を助けようと母親がベランダから投げ下ろしましたがキャッチに失敗、アスファルトの地面に頭を打ち重体になるという事故がありました。
【出火原因/事故原因】
出火元の506号室は35歳の母親と14歳長男と11歳長女の3人暮らしで、出火当時母親は仕事のため不在、電気ストーブが布団を加熱して発火したと見られています。14歳長男と11歳長女は逃げ出して無事でした。県営尾崎団地は5階建て、階段を挟んで同階左右の部屋があるというつくりになっています。出火元玄関に置かれた灯油用ポリタンクが火災の熱で破れ階段に流れ出し、階段が激しく延焼していたため4階家族はベランダから避難しようとしたものです。
【事故詳細】
27歳の夫は壁の雨樋を伝い3階から階段を使って避難できることを確認、家族を呼びに4階に戻りました。その間に早く子どもを助けたいと動転した母親が階下駐車場にいた男性住人に「受け止めて」と2歳児を投げ落とした。男性は一旦子どもを受け止めたものの腕の間から落ち、アスファルトの地面に頭を打ちつけて重傷を負いました。残った家族は階段を伝って避難しました。
【類似事項】
11月19日午前9時半ごろ大阪市西淀川区の木造3階建ての事務所件住宅から出火、3階の窓から投げ下ろされた5ヶ月女児を男性が無事受け止めたことがありました。各務原市の県営住宅火災で2歳児を投げ下ろした母親の頭には、このことがあったのかもしれません。
ただし大阪の事例は<1>3階の窓から<2>5ヶ月の子どもを<3>午前9時過ぎに<4>地面に粗大ごみとして出すつもりだった布団を敷きつめたうえで投げ下ろしたものであり、<1>4階のベランダから<2>2歳の子どもを<2>午前3時過ぎに<4>アスファルトの地面に立つ男性に投げ下ろした各務原の事例は?高いところから?重いものを?周囲が暗く見えづらい状況で?万が一の際の備えがないまま投げ下ろされたことになり、4つの項目全てにおいて危険な状況でした。
また大阪の事例では逃げ場を失った25歳と22歳の夫婦が3階から地面に敷かれた地面に向けて飛び降り足の怪我をして逃げ出さざるを得ないほどの切羽詰った状況で、階下の男性が「はよ離せ、俺が受け止めたる」と促されたうえでの投げ下ろしでしたが、各務原の事例では夫は雨どい伝いに階下に脱出し階段から逃げられると確認して4階に戻れるという状況で、階下の住人からも「危険だから投げるな」との声があがっていたといいます。
【パニックの誘発原因】
真夜中の突然の火事、通常出入りに使用する階段の延焼、ベランダの外の騒然とした騒ぎ、そうしたいずれもが母親から冷静な判断を奪い、そこから自分が落下すれば命を落としかねない高さと地面がアスファルトという状況で子どもを投げ下ろしたと思われますが、結果的に彼女自身はその後階段から通常使っているルートで避難することができました。それにしてもどうして彼女は自分に命の危険が迫っているほどの状況でないにも関わらずそうしたパニック状態に陥ってしまったのでしょうか。
27歳の夫は雨どいを伝って階下に降りるという行動力があるほか、職業が弁護士でもありました。彼女にとって夫は判断力に優れ行動力もある頼れる存在であったと思います。その夫が先に階下に下りてしまいベランダからいなくなったことが、彼女から冷静な判断を奪った最大の要因ではないかと推測します。
夫はその後、階段から避難できると判断し残った家族全員を誘導して避難するのですが、夫が先にベランダから降りてしまったことで、もう夫は戻ってこないのではないか、自分たちは取り残されてもうどうしようもなくなってしまったのではないかという追い込まれた状況に自分を追いやってしまったのではないかと思われます。夫が再びベランダに現れなければ、彼女は逃げ出さなくては焼け死んでしまうというほどの状況ではなくとも残る5歳の子どももベランダから投げ下ろし、自分も地表めがけて飛び降りたかもしれません。
別の意味では彼女は、パニックが起きると何もできなくなってしまう訳ではなく、自分でどうにかしないといけないという行動力は発揮できるのかもしれませんが、ただそこから冷静な判断は抜け落ちてしまうということなのかもしれません