ekiden_racer2008-03-18

【事故概要】
16日、広島市立安佐市民病院(ベッド数527)で、筋肉注射する予定だった抗てんかんフェノバルビタール(商品名フェノバール注射液)を23歳の看護師が誤って点滴用チューブを通して静脈に投与し、16歳の男性患者が死亡する事故が起きました。
本来は午前10時に担当看護師が注射する予定でいましたが、他の仕事に追われたため別の看護師が代わりに20分遅れで注射することになりました。その際筋肉注射するよう注意書きされている処方箋を確認せず、点滴用の管を通して静脈に投与するというミスが生じたものです。
フェノバルビタールは水に溶けにくいため有機溶媒に溶かすことで注射液として使用できるようにしており、水に混ぜると析出する可能性があるために点滴液などの他の液剤と混ぜて使うことは禁じられています。また筋肉注射箇所が壊死を起こす可能性があるため、末剤の内服が不可能な患者を除いて使用しないようにされています(患者は14日には医師と短い会話ができるまで回復していたということですから、注射液が処方されていたこと自体に疑問が生じます)。
【事故原因】
1.本来の担当看護師でなく、別の看護師が代わりに注射をすることになった。
2.別の看護師に依頼する際に、注射に関する注意が伝わっていなかった。
3.注射をした看護師が処方箋を確認せず誤った投与方法を取った。
4.アンプルに「筋肉注射」「他の薬液との混注不可」といった判りやすい注意書きがなされていなかった。
医療現場は慢性的な人手不足に陥っており、このケースでも多忙を理由に本来の担当看護師でなく別の看護師が注射をしたことがミスを誘発したものと推測されます。そもそも本来の担当看護師の作業計画に無理があったとも言えますし、看護師間のブリーフィングが不十分だったのかもしれません。また実際の看護作業を進めていく中で担当看護婦の手が回らなくなり、急遽別の看護師に依頼したということならそうしたすり合わせが不十分ということも起こりやすくなってしまいます。忙しい中では依頼する側は「細かく指示しなくとも当然注射箋を確認するだろう」と思ってしまいがちですし、逆に依頼された側は「私に簡単に依頼するくらいだから難しい技術を要する筋肉注射ではなく簡単な点滴への静脈投与なのだろう」と思い込んでしまうかもしれません。或いは担当看護師は点滴液が終わることを懸念して、点滴だけを新しいものに交換してもらおうと依頼したのかもしれません。同じバットに点滴液と注射液とが載せられていれば、それらを一まとめにして点滴するのだろうという早合点を招きます。