ekiden_racer2008-07-29

【事故概要】
神戸市の都賀川で鉄砲水が発生し流域で川遊びをしていた人や工事関係者ら26人が流され、4人が死亡1人が行方不明になるという事故が起きました。28日午後2時40分ごろから都賀川中流域に降った局地的な豪雨により鉄砲水が発生、河川敷にいた人たちが飲み込まれて流されたものです。
都賀川の特徴】
都賀川は全長1.8km、六甲山の麓から瀬戸内海に向けて一直線に高低差47mを流れ下りる都市の河川としては非常に勾配がきつい川です。傾斜のきつい高さ3mに及ぶ堤防でもある護岸と川底はコンクリートで固められています。
その一方で都賀川は神戸市HPで親子の遊び場として紹介されているほど、河川敷や浅い水路が整備されていて、市民から川遊びの場として親しまれています。
【都市河川の特徴】
都賀川は六甲山系から流れ出る河川ですが、鉄砲水をもたらした雨は中流域の市街地に降った集中豪雨でした。2時30分から10分毎に8mm/17mm/13mmの降水がありました。短時間に集中的に降った雨ですが、総雨量はとりわけ多いというわけではありません。ところが浸透域のない市街地に降った雨は短時間のうちに都賀川に流れ込み、2時40分から50分までの10分間で水位が138cmと急上昇しています。
この急激に増えた水量が勾配が強く、コンクリートで固められた水路を一気に流れ出たために流域にいた人たちは水量の増加に気づく間もなく、突然襲った鉄砲水に飲み込まれてしまったのです。
【対策】
都賀川は地形的にも護岸工事による構造上も鉄砲水が起こりやすいのですが、排水路としての役目は果たしており、今回も氾濫といった水害をもたらした訳ではありません。鉄砲水が起こりやすいにも関わらず、流域が水に親しむ憩いの場として整備されたことが事故を招いたのであり、またそこで遊ぶ人に増水の危険を知らせる仕組みがなかったことが事故を防げなかった原因です。
従ってその対策には鉄砲水を起こさないようにする治水と、情報周知システムの両面を考えなくてはならないでしょう。治水としては穴あきダムと地下伏流水となる排水路の設置が有効かと思います。穴あきダムにより一定水量以上の水が流れないようにし、増えすぎた水を排水路を通じて逃がします。他に考えられる対策としては遊水地の設置や護岸を緩やかにして流域面積を広げる、河川の流路を変えて流速を落とすといったことも考えられますが、これらは都市市街地の河川であることから現実的ではありません。
また水量が増えたり上中流で降雨があった際に流域で遊んでいる人たちに避難を勧めるサイレンやアナウンスを流すという対策が求められます。ただし今回の事故では雨が降ってから鉄砲水が来るまでの時間が非常に短く、実際にどれほどの効果があるかは疑問が残りますので、情報周知だけでは対策は万全とは言えません。特にその周辺では降雨がないような場合には、上流で降雨があって避難を呼びかけられても99年の玄倉川水難事故(放流を知らせるサイレンやダム職員による避難勧告に従わず13人死亡)のように正常性バイアスから避難をしないとか、度重なるアナウンスが狼少年となって効果が薄れるということも考えられるからです。