新人と現職の間で繰り広げられた長野県知事選挙は、接戦の末現職の田中康夫が敗れた。私はこれまで田中康夫対立候補擁立の不透明さを強く感じていたし、田中康夫の改革が進まないのは県議会との対立であり、県政を停滞させたのは知事ではなくオール野党の県議会側にあるのではないかと思っている。
 その一方で、長野市在住の折、県営住宅敷地内の放置自動車の撤去について、県営住宅の管理者である長野県建設事務所と長野市役所に働きかけたことがあった。長野市の職員は市民の問題として問題を解決に導くべくいろいろとアドバイスをしてくれた一方で、原則論を振りかざすばかりで問題解決に何の力にもなってくれない県事務所の仕事に強い不信を抱いた。この他にも市が管理する道路や公園の補修は手続きをすれば進む一方で、県関係の事業は予算の関係で遅々として進まなかった。
 田中康夫の改革は総論としては正しいのだが、それが現場では混乱と停滞をもたらしていたのではないだろうか。改革は住民に痛みをもたらすが、住民は行政にサービスを求めるのである。理屈は頭で理解できても、ニーズが満たせないのでは支持を失っていく。結果的に村井仁氏は53%得票し、田中康夫は46%の支持しか得られなかった。これは現実を映す鏡であったようにも思う。