長野県の村井仁知事は議員時代の三人の元秘書を県職員として採用しています。一人はかつての私設秘書を特別職の知事秘書として、二人目は元第一秘書を任期付き職員として東京事務所次長に、そして三人目は元政策秘書を任期付き職員の危機管理局参事として登用…という具合です。さらに言えば副知事の元大町市長も、知事選の選挙対策委員長でした。
無論元秘書の採用に当たっては側近人事でないかと、支持母体でもある自民党県議団からも自制を求める声が上がっていましたが、村井知事は自らの意思を押し通した格好になります。
もっとも当初は、そうした声に配慮し、一旦提唱した知事選の選挙対策委員長であった元大町市長を副知事に登用する案は引っ込め、元秘書を採用する案も白紙撤回する(9月)としていましたが、結局は側近人事を強行しています。
自民党よりの報道で知られ、田中知事時代には反知事キャンペーンを繰り広げた地元誌信濃毎日新聞も、11月29日の社説で「秘書の採用/知事は慎重な対応を」との記事を載せています。

東京都でも石原慎太郎知事がかつての秘書を副知事の一人として登用していましたが、議会からは百条委員会で偽証認定され、残る副知事二人と教育長が揃って進退伺いを出すなどして知事に更迭を迫り、結局石原知事自ら都政を混乱させたとしてこの副知事を更迭しています。これは登用された副知事の資質が問われたというだけでなく、元秘書を副知事に登用した知事の姿勢が問題視されたということではないでしょうか。もともと知事に近い側近であったために副知事としてバランスある仕事ができなかったということかもしれません。

議会からの批判や県庁内での孤立、そして何よりも県民からの批判を押し切ってまで側近を登用する村井知事の姿勢には疑問を感じます。それも、あからさまな側近人事をこれでもかと強行しています。もしかすると田中康夫を知事から引き摺り下ろしたい為に自民党県連が自分を担ぎ出したのだから、知事になった以上は好きにやらせてもらうと考えているのかもしれません。けれどこれには田中憎しで村井氏を担ぎ出した自民党県連としても、目を白黒させてしまっていることでしょう。もしかすると、県議以上に中央政界とのパイプが強い元大臣を引っ張り出したのは大変な失敗だったと臍を噛んでいるかもしれません。
知事が自分の給料の中から誰を雇おうが何を買おうが自由だと思いますが、選対委員長を副知事に据え、かつての秘書を縁故として職員として採用し、そんな個人的な取り巻き連中の給料を負担させられる県民はたまったものではありません。