2002年5月25日、台湾から香港に向かっていた中華航空611便・ボーイング747-200型機が空中分解事故を起こし、乗客乗員225名全員が死亡するという事故が起きました。同機は緊急救難信号を出す間もなく突発的な空中分解を起こし、機体は4つに分解して墜落しました。同機は就航から22年8ヶ月が経過、総飛行時間は64000時間を超えた経年化した機体でしたが、1980年に香港で離陸時に機体後部を地上に接触させるしりもち事故を起こしています。現場海域から回収された機体後部の破片から金属疲労による長さ数cmの亀裂が見つかっており、台湾行政院飛行安全委員会は1980年のしりもち事故などの修理箇所の際に継ぎ当てられた部分に金属疲労による亀裂と腐食が発生し、空中分解を誘発したものとしています。

1988年4月28日、ハワイ島からオアフ島ホノルルに向かっていたアロハ航空243便・ボーイング737-200機の機体外壁が破れ急減圧により長さ5.5mにわたって外壁・天井が吹き飛ぶという事故を起こし、機外に吸い出された客室乗務員1名が行方不明、破片や風圧により65名が重軽傷を負いました。同機は就航から19年が経過、総飛行時間3万3133時間、飛行回数8万9090回の経年化した機体でした。飛行時間の割に飛行回数が多いのは、ハワイ諸島内の短時間のフライトを繰り返すという特殊な運用形態によるものです。外壁リベットの穴から入り込んだ塩分が外壁材の金属を腐食させ亀裂が生じ、広範囲な機体外壁の破損を誘発しました。急減圧と同時に床下ケーブル破断により左エンジンも停止、機体の破損とともに墜落してもおかしくない事故でしたが、奇跡的にマウイ島カフルイ空港に緊急着陸しました。

日航123便の墜落したのは尾翼部分が破損したことにより油圧システムが働かなくなり、機体のコントロールができなくなった為です。その尾翼の破損原因は事故調によると圧力隔壁の修理ミスにより金属疲労で亀裂が発生し急減圧が起こった為とされているのですが、生存者の証言や様々な状況からすると実際には(尾翼を破壊するほどの)急減圧は発生していないようです。
中華航空611便が空中分解したのは機体の一部が破損し機体がきりもみ状態に陥った結果四散したものか、それとも空中分解に際して急減圧が関わっているのかは明らかになっていません。ただ急減圧が発生した場合にはアロハ航空243便のように、機体の一部は瞬時に大きく破損します。無論その場合には、客室乗務員が吸い出されるだけでなく、機内の備品なども吸い出され、はっきりとした急減圧があったことも明白に判ります。
日航123便の圧力隔壁には亀裂が入っていました。だとすると本来与圧されない筈の尾翼部分は、離着陸を繰り返す際に亀裂を通じて常に与圧と減圧を繰り返し、必要以上の応力が掛かる為にリベット部分などに負担が掛かります。急減圧が尾翼を破損させたのでなく、尾翼の取り付け部や方向舵などの金属疲労が進行し、尾翼の一部或いは尾翼が破損し、圧力隔壁の亀裂により与圧されている客室にも緩やかな減圧が見られた、というのが事実であると思います。