2001年のゴールデンウィークと2003年の夏休み、日本を二分する絶叫マシンの宝庫・富士急ハイランド長島スパーランドのジェットコースターで、ともに車軸の破損に起因する事故が発生しています。1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在すると言われています(ハインリッヒの法則)。エキスポランドの死亡事故を防ぐ教訓となり得た筈の、2件のコースター事故とはどのようなものだったのでしょうか。

富士急ハイランド「フライングコースター・バードメン」事故
2001年のゴールデンウィークの最終日5月6日午後5時10分頃、富士急ハイランドの滑空アトラクション「フライングコースター・バードメン」(2人乗り)が急停止、衝撃で搭乗していた男子大学生2名がそれぞれ腰の骨を折り6ヶ月・3ヶ月の重傷を負った。
「バードメン」は前年2000年7月20日に営業開始したばかりの全長440メートル・最高時速50キロの懸垂式コースター。乗客は腹ばいの姿勢で吊り下げられた形となり、滑空を疑似体験できるアトラクションコースターである。事故当時30キロのスピードが出ていたが、レールに接する前後の車輪のうち、前輪と本体ゴンドラを繋ぐ車軸が折れ急停止した。
事故原因を調査した山梨県警と富士吉田署は、車軸が折れた原因は強度設計に誤りがあったなどとして、翌2002年4月アトラクションを設計・施工した「豊永産業」の専務と設計部長を、業務上過失傷害の疑いで甲府地検書類送検した。
事故を受けて「フライングコースター・バードメン」は暫く営業を休止していたが、現在は通常の腰掛けゴンドラ式のコースターにマイナーチェンジし、「とっとこハム太郎ふわふわお空の大冒険」として営業している。

長島スパーランド「スチールドラゴン2000」事故
2003年8月23日午前10時50分頃、長島スパーランドのローラーコースター「スチールドラゴン2000」(36人乗り)が走行中、車輪が脱落して急停止。3両目に乗っていた女性が背骨を骨折、落下した車輪で30m離れたプールにいた男性が腰椎を骨折するなど10人が重軽傷を負った。
「スチールドラゴン2000」は2000年8月1日に営業を開始した当時世界最大(全長2479m・高さ97m)・最速(153キロ)のキャメルバック型ローラーコースター。全長は現在でも最長、キャメルバック(重力落下)式コースターとしては現在でも最速。事故当時50キロで地上8メートル高のコースを走行していたが、先頭車両右側の車輪6個つきユニットの脱落をきっかけに、全84個の車輪のうち実に44個が次々と脱落して急停止した。
事故原因調査に時間を要したが、2005年1月警察庁科学警察研究所の鑑定で車軸に、設計図にない留め具が装着されていたことが判明。その後の捜査で事故1ヶ月前の定期点検でコースターを組み立てた際、先頭車両の車軸に本来は不要なワッシャー(厚さ3ミリの金属板)を誤って取り付けたことが原因で車軸を固定するボルトに強い圧力がかかり、ボルトが折れたことが脱輪の原因。2005年10月桑名署は運営会社の役員3名(後に不起訴)とコースターの整備を請け負っていた「明和工務店」と、「一伸機工」の責任者ら計5名を業務上過失傷害の疑いで書類送検した。
事故を受けて「スチールドラゴン2000」は長らく営業を中止していたが、ISO9001を取得するなど安全対策を強化し2006年8月12日より試運転を重ね、事故後3年の月日を経て9月3日より営業を再開した。

3件の事故はいずれも車軸が破損して重大な事故となりましたが、破損に至る原因はそれぞれ違います。「破損原因」と「その背景」そして「責任の所在」をまとめると次のようになります。

  • バードメン      /設計ミス/強度不足    /メーカー
  • スチールドラゴン2000 /整備ミス/破損するよう加工/整備会社
  • 風神雷神Ⅱ     /金属疲労/整備不良・放置 /施設