最近社名をセブン&Iに変えたイトーヨーカドーで、アイラブ生活というCMをやっています。河原亜矢子が大きな洋犬と一緒に出ているやつです。それで掃除をしたり障子の張り替えをしたりという何でもない生活を楽しんでいる、という趣旨のイメージCMです。
 毎日の生活というのはどことなく面倒なものだというイメージがあるのですが、何でもない生活に楽しみを見出していこうというこのCMにはどことなく好感を抱いてしまいます。もっとも、モデル出身の河原亜矢子はそうした生活臭からはもっともかけ離れた女優の一人で、NHKの夜の連続ドラマ「百年の恋」で筒井道隆と共演していた時も、家事の全くできないとんでもない主婦を演じていました。そういうイメージの強い女優ですから、彼女が送っている生活には、コカコーラのCMにも共通するあり得ない世界観もついてまわります。その現実離れした豊かでのんびりとした世界観が鼻につくという人もいるかもしれません。
 CMの中の彼女がどういう境遇なのかと考えてみても、大型犬を室内で飼っているくらいのことしかわからないのですが、その家には男性の影は見当たらないけれども結構収入のある旦那さんがいるんじゃないかと思います。子供がいない、というところから彼女も共働きなのかもしれませんが、キャリアウーマンには見えません。
 けれど考えてみれば、洗剤のCMではとっても明るくて開放的なキッチンや脱衣所が舞台になり、トイレ用品のCMに出てくるのも一般家庭のお風呂場よりも倍以上広そうな高級タイル貼りのトイレです。そう言えばアイラブ生活で出てきたお風呂場にも、昔のヨーロッパのホテルにあるような脚のついた浴槽が置かれていました。
 それを見て、こんなキッチンやお風呂場やトイレが羨ましいなあと思ったりもするわけですが、実際には窓が大きすぎて断熱性が悪いんじゃないかとか、お風呂場にそんな大きな窓があったら覗かれないかと不安になるだろうというような突っ込みもしたくなります。それでいてCMの内容は油汚れに強い台所洗剤だったりトイレの拭き掃除シートだったりするわけです。何億も稼ぐ外国のテニスプレーヤーが一五〇〇ccの小型車に乗っているCMと同じくらいの落差があります。
 逆にカビ取り漂白剤では何のてらいもなく一般家庭の狭いお風呂場に生えたカビを写し出したりするわけですが、確かに何もそんなものをわざわざテレビで見たくもないという気もします。売れている若手芸人でもベンツやボルボに乗っているわけですから、小型車のCMでリアルを追及しようものなら売れていない安い芸人さん…のマネージャーくらいの人をCMに出さないといけなくなります。