姉歯元設計士の自宅や木村建築、総合経営研究所、そして株式会社ヒューザーに警視庁の強制捜査が行なわれました。捜査箇所は103ヶ所に及び、動員された捜査員は500人という大掛かりなものです。さて、参考人招致では耐震偽装マンション販売主として、ヒューザーの小嶋社長とともにシノケンの篠原社長も参考人として呼ばれました。ヒューザーのマンションは当初買い戻しや建替えが行割れるとされていましたが、耐震基準を満たさないマンションが追って判明するに連れ、自社での買い戻しはもちろん建替えができる見通しが立たなくなり、引っ越しや転居に伴う一時金もどこまで負担できるかが極めて不透明な状況となっています。
 一方のシノケンは耐震偽装されたマンションの棟数がヒューザーに較べ少なかったこともあり、早くからマンション契約を白紙に戻し、住民の退去もほぼ完了したという状況です。
 ヒューザーの小嶋社長は耐震偽装されていたことは知らず、国土交通省に対して構造検査を含む建築確認の徹底を申し入れるなど、偽装には関与していないと主張しています。しかし今年10月27日にイーホームズの藤田社長から耐震基準が満たされておらず構造計算が偽装された疑いがあると指摘された際に、正義感を押し通そうとするなとか、実際に地震が起きて倒壊してから発表すれば良いなどと、偽装された事実の隠蔽や発表を遅らせる旨の発言をしたとされています。そして翌10月28日には、耐震基準を満たしていないグランドステージ藤沢というマンションを契約者に引き渡しています。
 強制捜査ヒューザーに入ったということは、偽装を知っていた小嶋社長が、その責任を検査機関に押しつける形で強度の足りないマンションを販売しようとしたという詐欺の立証を視野に入れていることを意味しているのだと思います。参考人招致や証人喚問では、姉歯建築士以外構造計算書の偽装についての関与を否定していましたが、木村建築が姉歯建築士に鉄筋を減らせという指示をしていた事実と、総研の幹部が設計会社に対して鉄筋の太さや本数について指示を出していた事実が明らかにされています。
 耐震偽装が発覚してからおよそ一ヶ月が経過しています。その間自分たちが構造計算の偽装に関わった証拠となる書類やデータを隠蔽する時間は十分にあったのではないかと思います。捜査箇所が103箇所に及ぶということですから、首謀者側が証拠を隠滅していても、取引先には犯罪性の立証に有効な資料が残っているかもしれません。捜査対象は明らかにされていませんが、司法当局の捜査が待たれるところです。