渋谷区松涛にある女性専用温泉入浴施設「シエスパ」の源泉汲み上げ設備と従業員休憩室のある別棟で19日に爆発事故が起こり、3人が亡くなりました。温泉施設の別棟が爆発ということでしたので、詳細が判るまでは加熱の為のボイラーが爆発したか、或いはその燃料に用いていたガスが爆発したのではないかと思ったのですが、どうやら温泉に含まれるメタンガスが地下室に充満し、何らかの原因で引火して爆発したらしいことが判ってきました。
05年2月には東京都北区の温泉掘削現場から噴出した天然ガスが炎上し、同年12月にも大分市の病院施設内で温泉掘削中に天然ガスが炎上するという火災が発生しています。このように掘削作業中に地中に溜まっていたガスに引火するという事例はしばしば起きているのですが、既に掘削を終えて温泉を汲み出し営業している温泉施設での爆発事故は前例がないのではないかと思います。ちなみにシエスパは03年に掘削が完了し、06年1月に営業を開始しています。
東京都は05年の事故を受け、同年6月に掘削時のガス事故を防止する安全対策指導要綱を策定しています。都も掘削完了以降・営業時のガス事故は想定していなかったと思われます。
また今回の事故のケースを想定して、安全対策を立てることは容易なことだと思います。シエスパ別棟の地下室には温泉とその中に含まれる天然ガスを分離するガスセパレータと貯水槽があり、貯水槽の上に換気扇が一つ設けられていました。ですので対策としては、ガス濃度を測定する機械を設置するとか、換気扇は必ず複数備え付けるとか、こうした天然ガスの発生する設備は必ず地上に設けるとか屋外に設置するといったことを義務付けれることで、同様の事故を防げることでしょう。けれども私はこれでは不十分だと思います。
今回はたまたま天然ガスの成分が可燃性のメタンガスであり、これが密閉された空間で濃度が高まってしまったことが爆発を引き起こしたわけですが、そうした可燃性のガスを東京・渋谷の繁華街のようなところに放出するような温泉設備があることが適切とは思えません。また温泉の天然ガスには亜硫酸ガスのような濃度により致死に至る毒ガスもあれば、硫黄などの悪臭を放つものもあります。そうした点も考慮して下水処理施設やゴミ処理施設を設置するときのように、周囲への影響を考慮したうえで温泉設備は設置されなくてはならないものだと、認識を改める必要があるのではないでしょうか。