■2005年日本シリーズ第三戦 阪神タイガースvs千葉ロッテマリーンズ
ロ 010 200 700 :10 ●小林宏−小野−藤田−薮田
神 010 000 000 : 1 ○下柳−藤川−桟原−橋本−能見

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 マリーンズ連勝を受けてシリーズ三戦の舞台は甲子園に移りました。タイガースはベテランの下柳、マリーンズは小林宏の先発です。
 このゲームでも先取点を挙げたのはマリーンズでした。四回二死二・三塁から里崎の打球はショート正面のゴロで、注文通りのダブルプレーで終わる、と誰もが思いました。ところが一塁の判定はセーフとなり、ダブルプレー崩れからマリーンズが一点を先制しました。VTRではボールがグラブに収まるのが一瞬早かったように思います。そのジャッジはともかくとして、下柳が珍しく大声を上げて抗議しますが、阪神ベンチから岡田監督は出てきませんでした。ダブルプレーが一転、走者一・三塁となって試合を再開する下柳のことを思うと、一呼吸入れる意味でも監督が抗議する姿勢を見せてナインの志気を高める意味でも、ここは岡田監督が抗議に出るべきだったと思います。
 試合が僅差で決まったとすると、いつまでも物議を醸す判定になっていたと思います。けれど日本シリーズでは得てしてきわどい判定で試合が左右されることはないように思います。有利な判定を得たチームが判定がどうであれ、別のところで試合を決定づける追加点を挙げるか、さもなくば不利な判定を蒙ったチームが、その後相手チームを抑えて判定の不利を覆す、そのいずれかのドラマがこの後展開されることを予感しました。
 少々話が古くなりますが、一九七八年の阪急とヤクルトが争ったシリーズの第七戦で、ヤクルト大杉選手のホームランを巡って阪急上田監督が執拗な抗議をしたことがあります。打球がライトのポールを巻いて入ったか、切れていたかの判定を巡っての抗議だったのですが、次の打席でも大杉選手はこれでもかと打球をスタンドに運び、これで文句はないだろうと言わんばかりのプレーをして見せたことがあります。グラウンドでの決着は審判がつけるのではなく、選手自らがつけるものなのです。
 さて、微妙な判定の後を受けて打席に入ったのは、シリーズ二戦で八打席連続安打の日本記録を樹立した今江選手でした。今江選手の当たりは完全に打ち取られたボテボテのサードゴロだったのですが、当たりが弱すぎたために内野安打となり、マリーンズは幸運な二点目を挙げます。ゲームにはタイガースにとって嫌なムードが漂い始めました。
 マリーンズの小林は立ち上がりこそ不安定だったのですが、回を追うに連れ尻上がりに調子を挙げていきました。一対三と二点ビハインドのタイガースは六回からJFKの一角藤川を投入し、終盤の逆転を期します。藤川はその期待に応え、六回を二三振の三者凡退で切り抜けます。ところが七回でした。藤川のストレートをセンター方向にはじき返した里崎の打球は守備位置を変えていた鳥谷がショートゴロにできそうなところに飛んでいきました。ところが鳥谷はこれを後逸、いいところに守っていたことが裏目に出てエラーがついてしまいます。これで藤川が気落ちしたというわけではないのでしょうが、次打者今江に二塁打を浴び無死二・三塁の大ピンチを迎えます。ここでバレンタイン監督は代打にフランコを送りました。
 フランコは2−1と追い込まれますが、ストレートはファウル、ボールになる変化球は悠然と見送り、フォアボールを選びます。私はここが試合の分かれ目になったと思いました。藤川は確かにタイガース中継ぎの中でももっとも頼れる投手だとは思います。六回は完璧な内容でしたが、七回に入って、結果的にエラーになりましたがストレートをセンター方向に、ヒット性の当たりと二塁打と打ち返されています。この次点でフランコの打席の結果を待って、次投手への継投を考えても良かったのではないかと思います。結果的にフォアボールとなったのですから、ここで間違いなくウイリアムズが出てくると思いました。
 藤川のストレートは本来、おいそれと打ち返せる球ではありません。事実、六回にはマリーンズのクリンナップを三者凡退に切って落としています。しかし回を跨いで状況は一変していました。マリーンズはストレートに的を絞ってセンター方向に打ち返し、変化球は見切っていました。それでも藤川なら、威力のあるストレートで抑えられる筈の力を持っています。ただこの時、藤川の調子やマリーンズに見切られているという状態を考えると、限界に来ていたと思います。そしてその結果が無死満塁だったのだと思います。
 藤川はストレートをやはりセンターにはじき返され二者が生還しました。スコアは五対一となり、ピッチャー交代となりました。ここで私はウイリアムズが間に合わなかったのだな、と思いました。そして打者一人、もしくは二人遅れてウイリアムズが登場するものとばかり思いました。ところが岡田監督は桟原をマウンドに上げました。岡田監督はこのとき、この試合を負けゲームにしてしまったと思います。
 シーズン中の戦いであれば、四点のビハインドとなれば桟原に後始末をさせて、翌日のゲームに賭けるのも良いでしょう。けれど今は日本シリーズです。最長でも七戦までしかない短期決戦です。しかも二連敗しています。その三戦目のゲームを、四点差で投げてしまうというのは間違っています。
 桟原はヒットを浴び塁を埋めると、満塁アーチを浴びて本当にゲームを終わらせてしまいました。三試合連続二桁得点の大差でタイガースは破れました。