30日の久間防衛大臣の「原爆発言」は翌1日に大臣が発言を撤回、2日に安部総理が大臣に厳重注意をしました。安部総理が厳重に注意をする一方で、大臣を罷免しないだろうことは容易に想像できます。というのも安部内閣では発足直後の佐田玄一郎内閣府大臣の辞任により内閣支持率低下を招いて以降、失言程度では参院選に悪影響が及ぶことを怖れて更迭しない例を見てきたからです。一つは1月末に柳沢伯夫厚生労働大臣が「女性は産む機械」という発言をした件であり、もう一つが3月に事務所費経費に関する答弁で故・松岡利勝農林水産大臣が「ナントカ還元水」発言をやらかしています。故・松岡大臣の場合には失言はむしろ余禄であり、実際は事務所費問題に見られる「政治と金」問題の方がずっと根深いのですが、それでもなお大臣からの辞任を許さなかった安部総理が、「原爆が落とされたのはしょうがない」と失言したくらいでは大臣を更迭する筈がありません。しかも肝心の参議院選挙は今月末に迫っているのです。
ところが選挙が近いということから、逆に自民党内からも批判や辞任を要求する声が上がりました。実は松岡大臣の時にも、党内からそうした声が出ていました。しかし今回は、実力者が党運営を考えて内閣に打診したのでなく、次の選挙で当落を掛けて争う議員がそうした声をあげています。一人は東京都選挙区の保坂三蔵議員、そしてもう一人は広島選挙区の溝手顕正国家公安委員長です。この二人は来る選挙に大変な危機感を覚えてこうした異議表明をしたのであり、選挙がなければ一議員としてこうして声を挙げることはなかったかもしれません。
郵政民営化の是非を巡り自民党が二分した05年の衆議院総選挙は異様な選挙でした。原爆発言を巡り、今回の選挙でも内閣と与党議員とがぶつかりあうという事態が起きたということになります。