ekiden_racer2007-12-10

2007年6月、当時の安倍政権は予定されていた参議院選挙を先延ばしにする形で国会の会期を延長し、社会保険庁関連法案や年金特例法案、政治資金規正法改正案、国家公務員法改正案などの重要な法案を、野党の反対を踏みにじる形で数の論理で強行採決を繰り返し、次々に成立させていきました。これはきたる参議院選で与党が大きく議席を減らし、過半数割れになる公算が高いために参議院で与党が過半数を占める選挙前に何としても成立させ、実績を強調したかった為です。
続いて行われた参議院選自民党は歴史的な敗北を喫します。その原因はそれまで焦点の一つであった政治とカネの問題が赤城農林水産大臣(当時)の事務所費疑惑が選挙期間中に浮上したこともありますが、直近の延長国会での自民党のなりふり構わぬ強行採決の繰り返しが「このまま自民党政権が続くのはヤバイ」という気持ちを抱かせたためだと思います。
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病気を理由に突然退陣した安倍総理の後を継いだ福田総理ですが、ねじれ国会という状況下でアメリカ・ブッシュ大統領に約束したテロ特措法を参議院で否決されても衆議院で三分の二以上の再議決で通してしまおうという方針のようです。
その手続き自体は法的に問題はありません。ですが世論調査を見ても賛同者の少ないテロ特措法を通したところで自民党には何の旨みもない筈です。テロ特措法を成立させることができなければそれはそれで福田政権の求心力は弱まりますし、逆に成立をさせても国民の反感を買うばかりです。国際貢献を旗印に自民党が成立を目指すテロ特措法は、日米同盟のうえで重要な法案であり、これは国民のための政治ではなくアメリカを向いたサービスとしての政治であることは明白です。
その後野党が福田総理への問責決議案を提出するにしてもしないにしても、そのまま衆議院解散に至らなくとも衆議院は一年数ヵ月後までの間に総選挙を迎えます。この時点で再議決でテロ特措法を成立させようという腹の裏には、自民党解散総選挙も止む無しという考えなのでしょう。もしかすると多少雲行きは怪しくとも、時間を与えて民主党がしっかり全国組織で選挙を闘う体制を作り出す前に、総選挙に持ち込んだ方が有利と見ているのかもしれません。
ただ参議院選挙の直前に強行採決を繰り返して大敗したように、それ以上の衆議院再議決をゴリ押ししての衆議院解散となると自民党へのダメージは参議院選以上に深刻なものとなるのではないでしょうか。