ekiden_racer2008-01-03

【事故概要】
2日午前11時20分頃、群馬県嬬恋村のスキー場・パルコール嬬恋スキーリゾートのゴンドラ山頂駅で、乗客の忘れ物の手袋を取ろうとした63歳のアルバイト従業員が閉まったゴンドラの扉に左腕を挟まれ宙吊りとなり、10メートルほど進んだところで15メートル下の斜面に落下し死亡するという事故が起きました。
【事故背景】
ゴンドラは駅に到着すると、客が乗降できるようドアが自動的に開き、約90秒後に閉まります。ゴンドラのドアには挟まった異物を検知する装置がついており、異物を検知した場合に緊急停止する装置が備えられていますが、今回は反応しなかったようです。
その間ゴンドラは動き続けているのですが、ゴンドラを動かすワイヤーケーブルは2系統あり、一つは駅と駅の間を結ぶ速度の早いもの、そしてもう一つは駅で乗降する際に移動するためのゆっくりとしたものです。そしてゴンドラは駅に到着すると早いワイヤーケーブルから遅いワイヤーケーブルに乗り移り、扉が開いて乗降が終わると扉が閉じ、再び早いワイヤーケーブルに乗り移り、速度を上げてもう一方の駅を目指します。
山頂駅には3人の乗降補助員がいましたが、事故当時降り場にいたのは転落死したバイト従業員1人で、2人は監視室で待機していました。事故に気づいた監視室の従業員が緊急停止ボタンを押したが間に合わず、宙づりになった模様です。
腰掛け式のリフトでは昇降場近くには転落防止用ネットが張られていることが多く、また万一の落下の危険を考えてリフトの高さも低く抑えられています。一方事故のあったリフトは、ゴンドラ式のリフトであるためか昇降用のホーム長を長く取り、その先にネット等の安全対策は採られていません。また山頂駅のホーム先端は地上15メートルの高さとなっています。
【事故原因と防止対策】
当該事故の原因は、従業員が乗客の忘れ物を取ろうとして定常外の行動を取ったことにあります。その危険を防ぐための「異物検知装置」がありましたが、異常もしくは検知対象外であったことから事故を防止することができませんでした。他に監視室の停止ボタンにより事故を防止することも可能であり、実際に停止ボタンによりゴンドラを停止させたものの、ボタンを押す際に人による危険の認知および判断が必要であり、結果的にゴンドラを安全なところで停止させることができませんでした。
ですので対策としてはまず第一に、ゴンドラドアの異物検知装置が正常に働いているかどうかの点検と、検知範囲と感度を上げる改良も求められます。
次にゴンドラ内の忘れ物を取るという行為の危険性について、乗降補助員が認識を改める必要があると思います。リフトゴンドラは常に動いており、異物検知装置を作動させない限りすぐにその場で止めることができません。事故に遭った補助員はリフト全体を停止させるまでの必要はないと考えたのでしょうが、実際に行っていた行為は全体を停止させたうえで行わなくてはならないような危険なものでした。ですので監視室にいる仲間の補助員に合図をしてゴンドラを停止させるか、そこまでする必要がないと判断すれば忘れ物をした客には待ってもらって、麓の駅に連絡をして忘れ物が回送されてくるのを待つべきだったと思います。

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